試合のない日に行く、世界のスタジアム12
サッカーを見ない人が、試合のない日に行って、一日過ごせるか。それだけを物差しにして、12か所を並べました。
2026年9月5日 · 読みものは日本語だけです · 順位はこのサイトの見立てで、公式の格付けではありません
試合のない日のスタジアム。この記事が扱うのは、こちら側の時間です。
スタジアムが満員になるのは、年に何十日かです。残りの日は静かに建っていて、その静かな日に、公式の見学ツアーがロッカールームやベンチまで人を入れています。サッカーを追いかけていない人に向いているのは、たぶんこちらの日のほうです。
並べ方を先に書いておきます。試合のない日に開いているツアーや博物館があること。サッカー以外の催し、たとえばコンサートやアメリカンフットボールや地域の教室が、そこで行われていること。そして、まわりの街をついでに歩けること。この三つが揃っているほど上に置いた、編集部の見立てです。有名さや収容人数の順ではありません。
料金と時間は、各スタジアムの公式サイトを2026年9月5日に開いて、書いてあるとおりに写しました。いずれも変わります。 行く前に、その日の公式サイトをもう一度見てください。12か所を読み比べて、いちばん多く出てきた注意書きが「試合の日は見学の時間が変わる」でした。この記事の題は、そこから付けています。
もうひとつ、読んでいて面白かったのは、各クラブがサッカーを見ない人に何を売ろうとしているかです。ヨーロッパでいちばん長いと自称するバー、工事の見晴らし台、朝のビール。順位の合間に、それも拾っておきます。
1位 — トッテナム・ホットスパー・スタジアム(ロンドン)
Tottenham Hotspur Stadium / イングランド・ロンドン N17
サッカーを見ない人に一か所だけ勧めるなら、ここです。理由は建物の設計にあります。芝の面が分かれて引き込まれる仕組みになっていて、クラブはこれを、スパーズの試合に加えてアメリカンフットボール、ボクシング、ラグビー、コンサートを開くためのものだと説明しています。サッカー以外の日が、最初から予定に入っている建物です。
見学はスタジアムツアーのほかに、The Dare Skywalk という高所へ上がる催しがあります。クラブの説明では、こうした来訪者向けの施設をあわせて年間およそ200万人が訪れ、地域経済に年間3億4,400万ポンドの効果があるとのこと。数字はクラブ自身のものです。
収容は62,850 。クラブが持つスタジアムとしてはロンドンで最大だと公式サイトは書き、最前列からタッチラインまでは4.9〜7.9メートル、17,500席の単層スタンドは高さ34メートル超。それより気になったのは飲食のほうで、店舗は60以上 、ロンドンの屋台街から発想したとあります。その中に「ヨーロッパでいちばん長いバー」と自称する The Goal Line という一軒があって、店の名前がゴールラインです。バーの長さを誇るスタジアムというだけで、ここが誰に何を売りたいのかはよく分かります。
公式(The Stadium) ↗
2位 — サンティアゴ・ベルナベウ(マドリード)
Estadio Santiago Bernabéu / スペイン・マドリード
街の真ん中にあって、地下鉄で着きます。見終わったら歩いて次の用事に行ける。旅程を組む人にとって、この「ついでに寄れる」は効きます。
見学の券はいくつかに分かれていて、いちばん基本の Classic が一般37ユーロから (窓口では40ユーロ)。中身はレアル・マドリードの博物館、客席からスタジアムを見渡す場所、ロッカールームとベンチ。入場時刻を決めずに買える Classic Flexible Time(公式の説明は「選んだ日の中で時間枠は自由」)、ガイドが付く Guided と、値段の違う券が並びます。その日のうちなら何時に来てもよい券があるのは、旅程を固めきれない人にはありがたい。
注意書きがひとつあります。公式サイトは「スタジアムで催しがあるため、ツアーの経路と時間が変わることがある」と告知しています。行く日の分の案内を見てから、券を買ってください。これはまた、サッカー以外の催しがここで行われている、という知らせでもあります。
公式(Tour Bernabéu) ↗
3位 — サン・シーロ(ミラノ)
Stadio San Siro / イタリア・ミラノ
ミラノの二つのクラブが同じ建物を使っている、あの大きなスタジアムです。3位にした理由は屋根です。公式サイトの説明によれば、San Siro Skywalk は「その百年の歴史で初めて、もっとも象徴的な場所である屋根を開く」催しで、高さ55メートルにある赤い梁の上を、ガイドと一緒に歩く。客席とピッチの上に渡された通路を進み、街の屋並みからアルプスまで360度の眺めがある、と書かれています。
博物館とツアーは別の券で、同じ日に両方を予約すると割引がある、とも書かれています。料金と開催時間はここには書きません。予約の前に公式で確かめてください。地下鉄で行けます。
公式(San Siro Stadium) ↗
4位 — ウェンブリー(ロンドン)
Wembley Stadium / イングランド・ロンドン
サッカーの会場であり、同じだけ音楽の会場です。ツアーの公式サイトは自分たちを「英国最大のスポーツと音楽の会場」と紹介し、通常のツアーを「ふだんはスポーツと音楽の大物にしか開かれていない場所へ、スタジアムの奥深くまで入る」ものだと説明しています。舞台裏を見せる、というのがここの売り方です。
ツアーは通常のもの、専属ガイドが付く VIP、試合日に行くもの、と分かれています。学校や団体の受け入れもあり、25名以上で団体料金 。なお、2026年9月5日に wembleystadium.com/tours を開くと、予約サイトの bookings.wembleytours.com へ転送されました。案内はそちらで読むことになります。
公式(Wembley Stadium Tours) ↗
5位 — アンフィールド(リヴァプール)
Anfield / イングランド・リヴァプール
スタジアムツアーが16ポンドから で、クラブの博物館 The LFC Museum が併設。ここまでは他と同じですが、アンフィールドには外壁を綱で降りる The Anfield Abseil があります(38ポンドから )。公式の紹介文は「街の眺めを楽しみながら、クラブの巨大なエンブレムの横を通って降りる」。サッカーの知識はいりません。高いところが平気なら、それで足ります。
Legends Q&A という催しもあって、公式の説明は「クラブでプレーするとはどういうことだったか、選んだレジェンドから、個人的な思い出やロッカールームの話、笑える逸話を聞く」。開催日ごとに元選手の名前を付けて売られています。そして街のほうには、ビートルズの街としての観光がまるごと別にあります。スタジアムを半日、街を半日にすると、一日がちょうど埋まります。
公式(LFC Stadium Tours) ↗
6位 — ジグナル・イドゥナ・パルク(ドルトムント)
SIGNAL IDUNA PARK / ドイツ・ドルトムント
ここの博物館 BORUSSEUM は、クラブが作ったというより、ファンの発意から始まったと公式が書いています。応援する側が言い出して作った場所、という出自です。新しい宝物庫には、ブンデスリーガ、DFBポカール、チャンピオンズリーグ、インターコンチネンタルカップ、カップウィナーズカップの5つが並んでいます。
見学の種類が多いのも特徴です。ガイド付きの Guided Stadium Tour、仕事帰りに合わせた After-Work-Tour、午前中にビールを一杯やる Morning Pint Tour、バリアフリーの回、Meet EMMA Tour、ガイド無しで歩く Stadium Walk。「スタジアム見学」を一種類だと思っている人は、この一覧を見るとたぶん笑います。朝のビールが、見学の種類になっている。料金と開催日は公式サイトにあります。
公式(BORUSSEUM) ↗
7位 — カンプ・ノウ(バルセロナ)
Spotify Camp Nou / スペイン・バルセロナ
いま行くと、工事を見ることになります。博物館の券(28ユーロから )に含まれるものとして公式サイトが挙げているのは、博物館、デジタル音声ガイド、そして「Construction Viewpoint」。訳せば、工事の見晴らし台です。作り替えの途中を、隠さずに売り物にしている。
建て替え中のスタジアムを見られる期間は、どのみち一度きりです。それを目当てに行く人がいてもおかしくない、と読んでいて思いました。試合日に中を回るツアーは249ユーロからで、こちらは熱心な人向けの値段です。街そのものが観光地なので、スタジアムを外して予定を組み直すことも、その逆も、すぐできます。
公式(Barça Stadium Tour & Museum) ↗
8位 — ラ・ボンボネーラ(ブエノスアイレス)
La Bombonera / アルゼンチン・ブエノスアイレス(ラ・ボカ地区)
博物館の名前が Museo de la Pasión Boquense、情熱の博物館です。名前でだいたい察しがつきます。券は博物館とスタジアムツアーの共通券が基本で、南側スタンドの見晴らしの利く一点からスタジアムを見る Visita Express との組み合わせもあります。案内は月曜から日曜まで、少人数のグループ で。
読んでおきたいのは、公式サイトの但し書きのほうです。「開館と閉館の時刻は、トップチームの練習や試合の都合で変わることがある」。変更は博物館の公式SNSで知らせる、とあります。分刻みの旅程には向きません。そのかわり、まわりのラ・ボカ地区は港町の色を塗り重ねた通りで、スタジアムに入らなくても、歩くだけで写真が増える土地です。アルゼンチンの物価は動きが大きいので、料金はここには書きません。
公式(Museo de la Pasión Boquense) ↗
9位 — マラカナン(リオデジャネイロ)
Maracanã / ブラジル・リオデジャネイロ
見学は一般115レアル、割引57.50レアル 、開いているのは9時から17時 。券売所では現金でもカードでも買えると書いてあり、見学者用の駐車場の料金まで、車、バス、バイクで分けて載っています。旅行者への案内としては、今回読んだ中でも細かい部類です。
そして試合の日は、最後の見学が開門の5時間前に終わります 。公式サイトは日付ごとに「この日は何時まで、最終入場は何時」と貼り出していて、たとえば夜9時に始まる試合の日は、見学は夕方前に閉まる。行く日は、この掲示を見てから決めるのが順当です。リオは他に行くところが多すぎる街なので、半日単位で組むといいと思います。
公式(Tour Maracanã) ↗
10位 — ヨハン・クライフ・アレナ(アムステルダム)
Johan Cruijff ArenA / オランダ・アムステルダム
公式サイトの自己紹介が、この場所の性格をよく表しています。「25年以上にわたって、語り草になる試合からコンサート、企業の催しまで、記憶に残る瞬間がここで作られてきた」。サッカーの家だと言い張らないところが、この会場らしい。スタジアムツアーはその流れの中で、ごく普通に売られています。
音楽の予定も具体的で、2027年4月24日にロクシー・デッカーの公演が入っています。会場の発表によれば、オランダ人の女性ソロとして初めてここで単独公演のヘッドライナーを務めるとのこと。サッカーでない理由でスタジアムに来る日が、ここでは予定表に普通に載っています。街の中心からは地下鉄で出られる距離です。
公式(Johan Cruijff ArenA) ↗
11位 — エスタディオ・アステカ(メキシコシティ)
Estadio Azteca / 公式サイトの名乗りは Estadio Banorte / メキシコ・メキシコシティ
アステカの名前で覚えている人が多いと思います。ところが2026年9月5日に estadioazteca.com.mx を開くと、estadiobanorte.com.mx に転送されて、サイトは「Estadio Banorte」と名乗ります。行き先を探す人が迷わないように、この記事では両方の名前を書いておきます。
ガイド付きの見学があり、案内文は「メキシコでもっとも象徴的なスタジアムの歴史を旅する」。掲示されている催しはサッカーだけではなく、エルトン・ジョンの公演と、アメリカンフットボール(NFL)の開催が並んでいます。標高の高い街なので、着いた日の予定は軽くしておくほうが無難です。
公式(Estadio Banorte) ↗
12位 — ヴェロドローム(マルセイユ)
公式サイトの名乗りは CEPAC VELODROME / フランス・マルセイユ
地中海に面した港町のスタジアムです。海の近くに行きたいという理由で旅先を決める人には、この街ごと勧められます。OM Stadium Tour は16ユーロから と、今回並べた中では手の届きやすい部類です。
コンサートの予定も出ていて、2027年6月19日に GIMS の公演が入っています(65ユーロから)。ここも名前が動いた場所で、2026年9月5日時点で orangevelodrome.com を開くと、cepacvelodrome.com に転送されます。海があるのに12位なのは、公式サイトから拾えた「試合のない日にやれること」が、このツアーとコンサートのほかに見つからなかったからです。スタジアムを午前に、午後は港へ。海を見に来た人には、スタジアムはたぶん寄り道のほうです。それでいいと思います。
公式(CEPAC VELODROME) ↗
覚えていた名前が、もう違うことがある
12か所を公式サイトで確かめていて、いちばん意外だったのがこれです。スタジアムの名前は、思っているより頻繁に変わります。アステカは Banorte に、ヴェロドロームは CEPAC に、それぞれ公式サイトの名乗りが変わっていました。ケープタウンのスタジアムも、capetownstadium.co.za を開くと dhlstadium.co.za に行き着きます。ウェンブリーのツアー案内も、公式のURLから予約サイトへ転送されます。
日本も同じです。横浜国際総合競技場は日産スタジアムとして知られていて、これは日産自動車とのネーミングライツ契約によるもの。国立競技場のほうは、2025年4月から運営事業者が日本スポーツ振興センターから株式会社ジャパンナショナルスタジアム・エンターテイメントに変わり、その運営者の公式サイトは「MUFGスタジアム」を名乗っています(施設概要のページでの名称は「国立競技場」のままです)。
だから、チケットを探すときは、覚えている名前で検索するより、そのスタジアムの公式サイトから入ってください。名前の似た仲介ページや転売ページに迷い込みにくくなります。
日本にも、同じ物差しで残るスタジアムが二つある
ここまでと同じ物差しを当てます。試合のない日に、サッカーを見ない人が行く理由を、公式サイト自身が書いているか。日本ではこの二つが残りました。収容人数は見ていません。
日産スタジアム(横浜国際総合競技場)
公式サイトの自己紹介が、そのまま答えです。2002 FIFAワールドカップ、ラグビーワールドカップ2019、東京2020オリンピック競技大会。この三つの決勝が、同じ一つのスタジアムで行われました。世界の大会の決勝を三つ持つ建物は、上の12か所と並べても見劣りしません。
スタジアムツアーは大人1,500円、中学生以下800円、所要60分 。出発は10時30分、12時、13時30分、15時の4回。ただし開催日は限られていて、公式サイトが月ごとに告知しています。行く日を先に決めるより、開催日から旅程を決めるほうが確実です。
まわりの新横浜公園には、スタジアムと関係のない催しが日常的に入っています。相撲の体験教室、月例のレディーステニス大会、ラグビー教室、アーバンスポーツの体験会。東ゲート広場の噴水の運転状況まで、公式サイトのお知らせに出ます。サッカーを見に来ない人のほうが、用事を見つけやすい場所です。
公式(スタジアムツアー) ↗
国立競技場
収容66,727席、敷地面積およそ109,800平方メートル、竣工は2019年11月30日。数字より面白いのは作りのほうで、軒庇(のきびさし)には全国47都道府県から集めた木材が使われ、それぞれの県の方向に向けて配置されています(沖縄県だけは別の樹種)。観客席は白・黄緑・グレー・深緑・濃茶の5色で、外苑の緑に混ざるように配色されています。
試合を見に行かなくても、建築として見に行けるスタジアムです。神宮外苑という散歩に向いた土地にあって、駅からも近い。自分の県の方向を向いた木を探す、という遊びが成り立つ。催しの予定は運営者のサイトに出ます。
公式(施設紹介) ↗ / JAPAN SPORT COUNCIL ↗
行く前に確認すること
この記事の料金と時間は、2026年9月5日に公式サイトで見たものです。ひとつ残らず変わります。冒頭に書いた「試合の日は見学の時間が変わる」も、言い方はスタジアムごとに違いました。ボンボネーラは練習の都合でも変わると書き、マラカナンは開門の5時間前に終わると書き、ベルナベウは催しで経路が変わると書き、サン・シーロは試合や催しの日には直前に時間が変わることがあると断っていました。
試合のない日の、できれば平日の午前。それがいちばん静かで、いちばん自由に見られる時間です。旅程に余裕がない人ほど、そこを狙ってください。
最後に、公式サイトを読み比べていて残ったものを。ヨーロッパでいちばん長いと自称するバー、工事の見晴らし台、朝のビール、公園の噴水の運転状況。どれもサッカーの試合とは関係がなく、どれもスタジアムの公式サイトが、わざわざ書いていることでした。
行く前に空気を掴んでおきたければ、それぞれのクラブの公式チャンネルが、スタジアムの中を撮った映像を出しています。このサイトは、その公式チャンネルを国とカテゴリで並べたものです。イングランド 、スペイン 、南米 あたりから開くと、今回の12か所のほとんどが出てきます。全チャンネル一覧 から名前で探すこともできます。
参考にした公式サイト